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調査レポート

サステナブルなビジネスへの変革を加速

概略

  • 経営者は、利益を損なうとの懸念からサステナビリティへの取り組みを躊躇しています。
  • サステナビリティへの取り組みが時間を要することや、もたらされる成果が確実でない点に懸念があります。一方で従来のやり方は複雑でコストが高くつくことも理解しており、葛藤を抱えています。
  • サステナビリティを事業に組み込み、かつスケールさせるには、「従来のゴール設定」「事業展開までの時間軸」「成功の評価軸」の3つを見直す必要があります。

 

サステナブルな価値を再発明する

サステナビリティは企業変革の大きな推進力となります。一方、サステナビリティは企業利益とトレードオフ関係にあると考える経営者も多く、環境や社会的な影響を企業の意思決定に組み込むことに躊躇しています。このような考えは、今日の短期的な財務成果を重視する傾向を助長しています。

はたしてサステナビリティと収益性のトレードオフは重要な問題なのでしょうか、それともただの神話なのでしょうか?

98%のCEOは、サステナビリティを経営に組み込むことが自身の役割だと信じています。一方、58%のCEOは、サステナビリティと事業成長は対立していると感じており、葛藤を抱えています。

神話を払拭する:逆風が追い風に変わるとき

アクセンチュアは、世界経済フォーラム(WEF)が選出した次世代リーダー140人の意見を基に、企業のサステナビリティ推進を妨げる5つの逆風を特定しました。その結果、複雑性、コスト、時間、信頼性、実用性が挙げられました。

現役の経営層280人に同様の質問をしたところ、サステナビリティの推進は時間がかかり、信頼性に欠けるという点においては次世代リーダーと共通認識を示しました。他方、複雑性とコストについては、従来のビジネスに固執する方が複雑性とコストが高いと考えていることが分かりました。このことは、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を進めるうえでの追い風となるでしょう。

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の逆風と追い風を表す図
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の逆風と追い風を表す図

持続可能なビジネスケースには改革ではなく進化が必要

次世代のリーダーは、従来のビジネスケースに関する考え方を見直し、環境や社会的インパクトを考慮した意思決定を促すため、以下3つの観点を意思決定基準に加える必要があると考えています。

  • パーパスの実践:サステナビリティを利便性や価格など人々の価値観や行動から捉え直し、特定の社会課題の解決に的を絞った上で、それを基に利益を上げる方法を考える。
  • 長期的展望:ビジネスの持続性を長期的に捉え、新たなイニシアチブがスケールするまでの時間的猶予を持つ。
  • 全方位型価値(360°バリュー)の提供:ビジネスの成功の定義を短期的な財務パフォーマンスだけでなく、顧客体験やサステナビリティ等を含む広範な定義に広げ、エコシステム全体で協力して実践する。

経営者は新しいルールを受け入れることができるか

アクセンチュアの調査によると、現役の経営者の70%が次世代リーダーの考えに同意することが明らかになりました。一方で67%は従来から重視されてきたコストの最小化や四半期の収益向上が持続可能なビジネスモデルにおいても重要だと考えています。

先述した3つの新しい観点を従来のビジネスケースに取り入れられるかどうかが、サステナビリティの価値を最大限に引き出す鍵となるでしょう。

新しいテクノロジーを活用してサステナビリティを実現する

この3つの観点をサステナビリティ変革の指針とするならば、テクノロジーと人材はいわばその実行エンジンです。

企業はまず、強力なデジタルコアを構築することから始めるべきです。デジタルコアとは、クラウドを活用し、インフラとセキュリティ、データとAI、アプリケーションとプラットフォームの3つのレイヤー全体に新しいテクノロジーを取り入れるための連続的なプロセスです。

テクノロジーを活用し、データによって可視化することで、失敗への恐れを減らし、価値実現までの時間が短縮し、持続可能なイノベーションの波を引き起こすことができるでしょう。

テクノロジーがサステナビリティを加速する

1.

 クラウドコンピューティング:サプライヤーデータへのアクセスを簡単にし、バリューチェーン全体でESG(環境・社会・ガバナンス)の影響をより深く理解することができます。

2.

データ分析:データ内に関連性を見つけることができます。例えば、イノベーション、従業員のエンゲージメント、顧客満足度の向上が多様性と関連性があることを教えてくれます。

3.

デジタルツイン:デジタル空間上で現実世界を再現することができるので、産業廃棄物や水の使用などの運用状況を監視、削減し、リソース効率を向上できます。

4.

デジタルプラットフォーム:顧客に製品の使用と廃棄の記録を促し、管理・計測することで製品の品質向上に活用できます。

5.

イマーシブテクノロジー(没入型技術):地域社会がインフラプロジェクトのメリットを理解するのに役立ちます。例えば、建設作業が完了した後のエリアを仮想現実で映し出すことができます。

6.

スマートコントラクト:不正や改ざん防止により、リサイクル管理などの下流工程でのアカウンタビリティを高めます。

人材と組織文化の力

テクノロジーは重要ですが、それはパズルの一部に過ぎません。

企業は、持続可能なイノベーターとなることが促されるような企業文化を醸成する必要があります。その結果、持続可能性はイノベーションに組み込まれます。企業は、課題の正確な理解、多様な協力者との連携、没入型の試作を行うなど、様々な能力を構築する必要があります。これには、人々が新しいプロセス、技術、働き方を取り入れる手助けが必要です。

サステナビリティー・トランスフォーメーションを加速させる方法 

サステナビリティを意識した意思決定を行うことや、新しいテクノロジーに投資をすることで、変革の青写真が見えてきます。組織が利益を上げながら持続可能性を追及するために、アクセンチュアでは次の3つのプロセスを提唱しています。

  • 理解(Understand):収益性のある変革に向けたロードマップを作成する
  • 解除(Unlock):目標を大規模かつ迅速に実現するためにテクノロジーへ投資する
  • 解放(Unleash):新たなケイパビリティの構築に向けて人材戦略を強化する

筆者

Debra McCormack

Global Board Effectiveness and Sustainability Lead

Dominic King

Research Lead – UK & Ireland