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エネルギー業界における生成AIの労働力への影響
登場以来、様々な業界に変化をもたらしている生成AI。石油・ガス業界では、特に石油の深海探査や掘削計画の分析、またそこからの効率的な掘削計画立案といった業界特有のプロセスでの生成AI活用が進んでいます。そんな生成AIの業界への影響について、アクセンチュアの「Work, Workforce, Workers」の調査結果からひも解いて解説します。
3分(読了目安時間)
2024/12/20
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登場以来、様々な業界に変化をもたらしている生成AI。石油・ガス業界では、特に石油の深海探査や掘削計画の分析、またそこからの効率的な掘削計画立案といった業界特有のプロセスでの生成AI活用が進んでいます。そんな生成AIの業界への影響について、アクセンチュアの「Work, Workforce, Workers」の調査結果からひも解いて解説します。
3分(読了目安時間)
2024/12/20
生成AIの進化は、エネルギー業界に新たな風を吹き込んでいます。中でも石油・ガス業界では、石油の深海探査や掘削計画の分析といった業界特有のプロセスにおいて生成AIの活用が進んでおり、大量の地質データの迅速な解析や、効率的な掘削計画の立案が可能になりつつあります。また、エネルギー業界に限らず、生成AIは、製造や保全、カスタマーサービスや事務職など、様々な職種の業務プロセスに影響を与える可能性があります。アクセンチュアのWork, Workforce, Workersの調査結果から、日本の労働市場全体では平均約4割、日本のエネルギー業界でも同様に約4割の労働時間が大規模言語モデル(LLM)により自動化または大幅に強化される可能性があることがわかりました。
一般的に、定型的で反復的なタスクが多い業務は、大規模言語モデルによる自動化の影響を受ける可能性が大きいと考えられます。一方各業界の専門職に多い、抽象的な推論や問題解決スキルを必要とするタスクが多い職業では、LLMによる能力強化の可能性が大きいと考えられます[i]。さらにアクセンチュアリサーチの試算によると、事務職(オペレーション)は大幅に自動化されると見込まれる一方で、日本のエネルギー業界ではその就業人数の規模は小さいと考えられます。就業者数が多いエネルギー業界の専門職の職種(各種技師・技術者等)では、平均すると約41%の労働時間がLLMの自動化または強化による影響を受けると推計されます。
出所:Accenture Research (総務省統計、O*NETのデータに基づく)
また、この影響を生産性向上の視点で捉えると、日本の全業界では約7%から32%、エネルギー業界では約10%から15%の労働時間の節約により、生産性が向上する見込みです。他業界に比べると影響は限定的に見えますが、10%以上の生産性向上は無視できない規模です。なお、労働時間の節約は、必ずしも既存の仕事の総数を減らすわけではないと考えられます。新技術の導入により労働市場の性質が変化したり、既存の仕事の一部の置換や強化が行われたりすることで、 最終的には多くの新しい役割を創出する可能性があります[ii]。
エネルギー業界は、脱炭素への取り組み、労働人口の減少、そしてサプライチェーンの安定といった数々の課題や変化に直面しており、生成AIの活用が新たな対応策として注目されています。炭素排出量の管理、業務効率化による人手不足の解消、需要予測の精度向上、さらには在庫計画の最適化などにおいて、生成AIは意思決定を高度化・迅速化する大きな可能性を秘めています。ビジネスリーダーは、様々な課題や将来的なリスクに対処しつつ、自社の生産性の向上や業務効率化を図り、企業成長を推進させることが求められます。そのため、生成AIが仕事に与える影響を把握し、従業員が新しい働き方や役割に適応できるよう支援することが期待されます。生成AIの技術は日々発展しており、その活用方法を継続的に模索することが、競争力を維持する鍵の一つとなります。生成AIのような最新技術を効果的に導入し、業務プロセスや意思決定の高度化を実現できる企業が、変化の激しい市場環境において成長を続けていく可能になるでしょう。
本稿執筆にご協力いただいたアクセンチュアリサーチに感謝を申し上げます。
[i][ii] Jobs of Tomorrow:Large Language Models and Jobs, White Paper (World Economic Forum in collaboration with Accenture Research)