課題―求める変化
基幹システム本格始動。その利活用を全社で推進できる人材とは
ENEOSの長期ビジョンを実現するための要と位置付けられている、IT基盤である基幹システム(ENEOS内通称CoMPASS)。「経営路線として、いわゆるデータドリブン経営に結び付けていくものであり、事業運営を支え、その次の段階に向かうための核となるプロジェクト」(ENEOS株式会社 IT戦略部 部長 田中 祐一氏)です。
基幹システム導入としては、国内外を見ても最大規模といわれるほどの巨大プロジェクトも、導入フェーズを終え、さらなる利活用推進を目指す段階に入っていました。それに合わせ、CoMPASSの導入から、運用保守を担うIT戦略部も、その役割を「基幹システムのパフォーマンスを最大限に生かす」ことにシフトする必要がありました。「プロジェクトが落ち着いてきて、より高みを目指していきましょう、と。個人レベルもそうですが、体系的に進めたいと考えていました」(ENEOS株式会社 IT戦略部 副部長 鳥居 雅氏)。
ただ、システムの内容を熟知しつつ、実際にシステムを利用する業務部門への活用提案、あるべき進め方の調整など、提案・技術営業に対応する組織であるためには、その中核となる人材の存在が不可欠です。しかし、基幹システム利用企業のIT部門として、特にSAPシステムを利用する立場として求められる最適なスキルや知見を、どのように明確化していけばよいか不透明でした。その結果、この「人材育成」の最終ゴール達成に向け効果的な目標設定も明確にできないという影響も出ていました。
さらに、元となるプロジェクトが巨大であるため、まず関連する情報だけでも膨大な量があること、そしてプロジェクトの各フェーズに合わせ、チームを離れたり、途中参画したりするメンバーも多く、業務に関わる効率的な情報の継承や習得にも課題がありました。
取り組みー技術と人間の創意工夫
IT人材育成の確固たる土台構築にかけられた時間は約10か月
通常、長い時間を必要とする人材育成。しかし今回のプロジェクトは、人材育成のための土台を約10か月という短期間で築くことが前提でした。「10か月というのは私たちにとっても短い期間でしたが、アクセンチュアも開発に入っていたCoMPASSを、ENEOS様にもっと活用していただきたい。そのための人材育成をスピードアップしたいという想いはアクセンチュアも同じでした」(アクセンチュア西森)。
そのため、まずはENEOSという基幹システムユーザー企業に求められるIT人材の姿を明確にするところから始めました。アクセンチュアの持つ知見を利用し、もっとも重要となる「必要とされる人材」の定義(アプリスペシャリスト・基盤スペシャリストの2つのタイプの定義)、またその具現化・実践のため、スキルセットの策定、アセスメントができる仕組みを構築しました。具体的には、2種類の人材タイプ、47のスキルセットを定義したうえで、アセスメント(スキルのレベル評価)を通して、メンバーのスキルを可視化し、組織・個人としてそれぞれ伸ばす領域を特定し、明示しました。
また、人材育成教材の専用サイトを立ち上げ、CoMPASSプロジェクト内で蓄積されてきた膨大な資料をもとに実践的なトレーニングコンテンツを作成しました。加えて、アクセンチュア社内の人材育成にも活用されているノウハウ・メソッド・ナレッジも盛り込み、全66講座の育成コンテンツをオンデマンド形式で社内展開していきました。受講者自身のペースで必要スキルの学習を可能とし、受講後の理解度テストを通し、着実なスキル定着を図っています。
さらに、ワークショップ型で現場の声を拾い上げて課題の分析も行いました。一部の回にはアクセンチュアの開発・保守メンバーも参加し、CoMPASSプロジェクトの課題やありたい姿、今後のアクション等について、膝を突き合わせ、活発な議論が展開されました。そこから、毎回「その日からのアクションプラン」を議論し、ワークショップがその日限りのものではなく、より実用的なものとなるよう具体案実践とその重要性の意識づけも行われました。
「我々は、エネルギーや石油のこと、社内手続きについてもコンテンツ化しました。アクセンチュアには、人材育成観点のSAPスキルはもちろん、一般的なビジネススキルも提供していただき、一緒に作り上げていったところが印象的でした」(鳥居氏)。