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ブログ

Accenture Technology Vision 2025から見る自律型AIエージェントとの付き合い方

9分(読了目安時間)

2025/07/14

概略

  • 自律型AIエージェントと「共に働く」未来が近づいている。その実現にはAIに対する「信頼」が不可欠になっている。

  • AIエージェントを理解し、信頼するための最新のトレンドを4つご紹介する。

 

Accenture Technology Vision(アクセンチュア テクノロジービジョン)とは

アクセンチュアのテクノロジービジョンは、25年間にわたって、企業全体の状況を体系的に調査し、ビジネスや業界を変革する可能性が高いテクノロジー・トレンドを特定してきたレポートです。

2025年の最新レポートでは、学界、ビジネス界および公共部門にまたがる20数名の専門家からなる外部アドバイザリーボードから知見を収集。また、世界28カ国、21業界の4,000人以上の経営幹部と、12,000人以上の消費者を対象とした定例・定量調査も含まれています。

2024年の同レポートは「テクノロジーに人間性を組み込む」と題し、機械が人間に近いレベルで上手く交流できるようになる未来を示唆しました。この未来が現実になりつつある2025年、最新レポートでは、機械(AIエージェント)といかに良い関係性を築けるか、に焦点を当てています。

2025年の4つのトレンド──AIエージェントを理解する

今、「AIエージェント」の進化は急速に進んでいます。「記憶」、「計算」、「予測」といった人が「意思決定」をする手前までのプロセスを担えるレベルに到達しつつあります。

一方で、人はより重要な意思決定に集中できるようになる中、企業の中でAIエージェントの普及が進んでいるとは言えません。足枷になっているのは、人が「予測」と「意思決定」をルールや規定として事前に組み込んでしまっている既存のシステム(仕組み)です。企業は、いかにしてAIエージェントに「予測」を委託するトランスフォーメーションができるのでしょうか?

AIを信頼し、予測を委託するにはまず、AIエージェントを理解することが重要です。そのための4つのトレンドをご紹介します。

1. バイナリ・ビッグバン──爆発的なデータとプロセス蓄積で、システム開発が一変する

1つめの「バイナリ・ビッグバン」は、AIエージェントと人が協力することで生まれる莫大なデータとプロセスにより、AIがさらに賢くなる正のフィードバックサイクルを指します。

システム開発において、企業は、AIエージェントを前提とする時代の転換期にいます。テクノロジー各社がAIエージェントの構築や、自律型AIエージェントの導入を支援するサービスを開始しています。今や新たに導入するコードの25%以上をAIに生成させる企業も出てきた一方で、この2年間でプログラマーの仕事の4分の1以上が消滅したとも報じられています。

この状況をさらに加速させるのが「バイブコーディング」と呼ばれる開発手法です。開発者がAIエージェントと互いに指摘し合いながら磨き上げる手法で、生産性や品質が圧倒的に変わっています。

技術的基盤としては、Anthropicの提唱したMCP(Model Context Protocol)がデファクトスタンダードとなり、エンジニアに限らず、AIエージェントが既存システムやデータにシームレスにアクセスできる環境が整い始めています。

これらの流れから、プログラムやアプリ開発が、エンジニア以外の人も可能になると、ワンタイム・プログラムを短時間に作って活用するようになり、バイナリーデータの生成が加速度的に進む「バイナリ・ビッグバン」が起こります。

一方で、データが指数関数的に増えることで、質の悪い学習データによるデータ汚染や、高度なAIによる不正など、悪影響も示唆されています。企業は、それらの特性を理解した上でAIの信頼を勝ち取ることが重要です。対策を始めた企業では、高品質な学習データの確保やAIへのルール適用を進めています。信頼関係ができれば、AIエージェントが自律的に企業のDXを推進し、活躍の場もさらに拡大する好循環を生むことができるでしょう。

企業情報のバイナリ・ビッグバンとして下記を述べています。Step1 DXに着手した企業:企業のDX化を推進することで基礎となるデータを蓄積。Step2 AI エージェントの導入:蓄積したデータを学習したAIエージェントが従業員を支援。Step 3 AIエージェントの自律的拡:AIエージェントが自律的にDX領域を推し広げる。
企業情報のバイナリ・ビッグバンとして下記を述べています。Step1 DXに着手した企業:企業のDX化を推進することで基礎となるデータを蓄積。Step2 AI エージェントの導入:蓄積したデータを学習したAIエージェントが従業員を支援。Step 3 AIエージェントの自律的拡:AIエージェントが自律的にDX領域を推し広げる。

2. 未来の顔──AIエージェントによる顧客体験戦略 

2つめの「未来の顔」は、AIエージェントが顧客接点の要になる時代を指します。

従来の不特定多数の顧客に接触するマス広告の手法から、AIエージェントが顧客と1対1のコミュニケーションをする手法になっていきます。さらには、顧客個人もAIエージェントを持ち、AIエージェント同士がパーソナライズされたサービスを双方向・自律的にやり取りするようになるでしょう。このAIエージェントによる顧客との接点を生かし、デジタルツインの顧客像を作りながらブランディングのシミュレーションも行えるようになります。

ユーザー一人一人がAIエージェントを持ち、AIエージェント同士のやりとりも増えていくと、他社のAIエージェントと自社のAIエージェントを連携させることも考えられます。実際、AIエージェント同士が自律的に情報交換するためのプロトコルも発表されています。

形成されつつあるAIエージェントのエコシステムで、企業が恩恵を享受し、生き残るためには―2000年代のポータルサイト黎明期から学ぶことがあります。生き残ったのは、技術をオープンにしプラットフォーマー化した一部企業のエコシステムに素早く参画した企業でした。この歴史からも、企業は自社のAIエージェントを通じて顧客データを収集し、パーソナライズされたサービスを提供する「独自路線」と、他社のAIエージェントとの協力を重視する「コラボ路線」の両立が求められていくでしょう。

AIエージェントによる体験差別化のポイントとして下記を述べています。 1.独自路線(クローズドなアプローチ): 自社のAIエージェントと顧客の対話を通じて、自社しか知らない顧客の深層データを収集し、アウトプットをパーソナライズ 2.コラボ路線(オープンなアプローチ): 顧客が所有するAIエージェントにアプローチ。企業・顧客のAIエージェント同士の繋がりを重視= エコシステムに参加・貢献を積極的に行う
AIエージェントによる体験差別化のポイントとして下記を述べています。 1.独自路線(クローズドなアプローチ): 自社のAIエージェントと顧客の対話を通じて、自社しか知らない顧客の深層データを収集し、アウトプットをパーソナライズ 2.コラボ路線(オープンなアプローチ): 顧客が所有するAIエージェントにアプローチ。企業・顧客のAIエージェント同士の繋がりを重視= エコシステムに参加・貢献を積極的に行う

3. LLMが体を持つ時──AIの融合により、ロボットがプライベートに溶け込む 

3つめは「LLMが体を持つ時」です。これは、大規模言語モデル(LLM)とロボティクスの融合により、より人間らしいヒューマノイドロボットが誕生し、人間社会に溶け込む時代が近づいていることを指します。

背景には、ロボット制御技術が、ハードウェアからソフトウェア、さらにAI主導へ移行したことにあります。「脳」の進化として、テクノロジー企業や大学により、LLMの深い思考能力に加えて、小脳的な反射機能を加える手法や、仮想空間で何万世代ものシミュレーションを通じて、視覚センサーなしに手足の感覚だけで地形を理解して動くロボットの開発も進んでいます。

「脳」に加え、「身体」も人間に近づいています。腱駆動のシステムや温度や質感を同時検知する知覚センサー、知覚したデータを基に空間情報を理解する基盤の研究・開発も行われています。

このように人間らしいロボットが誕生し、機械によるプライベートなコミュニケーションが加速する中、懸念もあります。ロボットにより集合知化されたデータやプライバシーをどのように管理していくのか、倫理やセキュリティ面の整備は不十分で、整理に向けた議論が急務です。

社会は人間のためにデザインされたインターフェース:ロボットが人間の形を獲得することで、あらゆる場所で活躍することを述べています。
社会は人間のためにデザインされたインターフェース:ロボットが人間の形を獲得することで、あらゆる場所で活躍することを述べています。

4. 新たな学習サイクル──AIと人間の相互学習の仕組みづくり

4つめの「新たな学習サイクル」は、AIと人間が信頼しながら相互に学習し、共に進化する好循環を指します。

最新の調査では、企業経営者の95%が今後3年間で従業員がよりイノベーションに関する仕事に取り組むことになると予想し、約70%が生成AIを含むリスキルが必要と考えています。一方で、「従業員の52%がAI利用を隠している」という結果*もあり、経営層と現場のAIに対する意識の差が浮き彫りになっています。

従業員のAIに対する不信感があると、業務で活用されない、データが蓄積されない、AIの精度が上がらないという負の学習ループに陥ってしまいます。正の学習ループを作ることが重要です。

また、人に求められるスキルも変わります。これまでは、専門知識や規定プロセスを正確に遂行できるスキル、トップダウンの指示を理解し実現する階層的なコミュニケーションスキルが一般的に求められてきました。しかし、生成AI時代では、AIのサポートを常に受けられるため、より根底となる企業の価値観や行動基準とのマッチ度や継続的にAIで学習し仕事の仕方を変えられる柔軟性、AIエージェント含め組織を超えた協創的なコミュニケーションができるスキルが求められます。

AIと人間が共進化する時代に求められるスキルとして下記を述べています。1. 企業価値観・文化との合致 2. 継続的学習と適応能力 3. 共創的コミュニケーション
AIと人間が共進化する時代に求められるスキルとして下記を述べています。1. 企業価値観・文化との合致 2. 継続的学習と適応能力 3. 共創的コミュニケーション

これらの従業員のリスキルを含め、正の学習ループを実現するには、全従業員がAIエージェントに触れる環境を用意し、従業員が自発的に開発したアプリを社内で共有したり、AI活用のコミュニティーをつくったりすることが重要です。

ここで必要なポイントは、3つです。1つめは、正のフィードバックでセキュアにデータが集まるデジタルツインの構築。2つめは、AIエージェントと人、AI同士がコミュニケーションできる自己組織化フィールドの提供。3つめに、AIエージェントと人の協働をサポートするコーチ機能の組織への組み込みです。

アクセンチュアでは、生成AIアプリケーションをセキュアな環境で作成し、チームで共有するための基盤として「Peer Worker Platform」を整備し、取組みを始めています。

We recommendとして下記を述べています。1. What to think     考えるべきこと:感覚的な豊かさが求められる時代のテクノロジーの役割。 2. What to say     言うべきこと:デジタルとリアルをリバランスしたコミュニケーション。 3. What to do     やるべきこと:感情的なつながりを深める統合的な体験設計。
We recommendとして下記を述べています。1. What to think     考えるべきこと:感覚的な豊かさが求められる時代のテクノロジーの役割。 2. What to say     言うべきこと:デジタルとリアルをリバランスしたコミュニケーション。 3. What to do     やるべきこと:感情的なつながりを深める統合的な体験設計。

さいごに

これまで、AIエージェントをより深く理解するための4つのトレンドをご紹介しました。AIエージェントは、一見人と同じようでも、必要とするインプットや複雑さ、エネルギー消費量が圧倒的に違います。「人のような言動を力業で実現した別物」であるAIエージェントは、「何か良いこともあるが、下手な付き合い方をすると悪いことが起こる」存在。それは、例えば、古来の「妖怪」のように、適度に恐れながら、上手く付き合っていくお隣さんのような距離感が良いのかもしれません。

アクセンチュアは、生成AI時代の企業変革・価値創造実現に向けて、お客様と伴走しながらご支援します。

*出典:Microsoft&LinkedIn 2024 Work Trend Index Annual Report 2025/5

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筆者

山根 圭輔

執行役員 テクノロジー コンサルティング本部 クラウドインフラストラクチャーエンジニアリングサービスグループ日本統括 兼 インテリジェントソフトウェア エンジニアリングサービス グループ共同日本統括 シニア・マネジング・ディレクター